久しぶりの作品を懐かしんで観てみようブームとして外せないのが、浅野忠信さん出演の作品。かつて好きだったんですよねー。出る作品も、浅野さんも。ファンになってからはほぼ欠かさず見ていたのじゃないかな。
そのころのまだピュアな(?)自分が存在する映画「ヴィタール」
以前見たときはもう少しファンタジックに捉えていたような気がしたけれど、今の自分にはより「死」が身に迫る作品でした。
塚本監督独特の色彩と言いますか、青みがかった映像がより「生と死」の間に揺れ動く主人公の精神状態を不気味に映し出しています。
高木(浅野忠信)は事故により記憶喪失になった。両親の希望に反して医師の道を断とうとしていた彼はまた、取り憑かれたように医学を志す。
無事に医学部に入学し、解剖の実習をしていた彼は覚醒したように緻密なデッサンで人間の成り立ちを追いかけていくうち徐々に記憶の扉が開いていく。
非常に象徴的と言いますか、記憶を失った一人の男が美しい女と出会い、そして対峙するただの「解剖対象」だったボディに感情が生まれていくうちに、生と死の境界を揺れ動くことになる。
解剖の過程がとてもリアリティに溢れていて、そういうのが得意でない人にはちょっと厳しい作品なのかもしれません。ただ、その細部は取り扱う人間の心を投影するようにすこし現実味に欠けている。そこに強烈な人間性を感じていく高木にとって、その体は特別なもの。
過去のカケラが彼の記憶を順に想起させていく様がありありと描かれるのです。
身体と精神と、生と死と。
強烈なコントラストで描かれるその対比は時に美しく、時にグロテスク。
上映時間は1時間半弱。
2時間はちょっと・・・と敬遠するような人には最適な濃密な時間が過ごせます。
本当に伝えたいこと、それがコアに近づけばそれほど、このくらいのサイズに収まるのかもしれない。
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