市役所に勤める月末(錦戸亮)が命ぜられたのは、新住民6人の受け入れ。そつなく業務をこなしていく月末だが、次第にその6人が全て受刑者、しかも殺人事件に関わった人間だと言うことがわかる。
過疎対策で仮釈放の受刑者を受け入れることになった地方都市魚深町を舞台に、条件の10年を受刑者たちは穏やかにやり過ごすことができるのか。
皆一癖ありそうな彼ら。それぞれ事情は違えど、人を殺めた経験がそうさせるのか異様な空気は拭えない。
そんな中港で死体が上がり、月末は己の偏見と戦うことを強いられていく。
異様な空気感を増殖させているのが、やさぐれ感のある杉山(北村一輝)。誰かと組んでやばい仕事で一儲けでもしたいと考え、他の受刑者たちに近付こうとする。
そして何を考えているのかわからないのが、一見町に溶け込もうと気を許している雰囲気を漂わせながらも、誰も寄せつけないような冷たい目をした宮腰(松田龍平)。やがて、月末が長く思いを寄せている文(木村文乃)と接近し、祭りにも参加しながらますます町に馴染んでいくように見えるのだがその真意は見えない。
この他にも月末の父親と妙な関係になる理江子(優香)など、のどかな田舎町にやってきた異種の生き物がどう化学反応を起こしていくのか、興味深くもありリアリティもあります。
田舎町の公務員でのどかな性格の中に、人の良さがにじみ出る青年を錦戸くんが好演。好きな女に告白もできないでいる気弱な男を魅力たっぷりに演じています。
ただちょっといい人すぎると言うのか、物分かりが良すぎると言うのか。
もう少し原作ではストーリー性があるのかもしれないけれど、彼がなぜそこまで受刑者に思いを砕いているのかが消化不良。
やっぱり自分だったら、いくら偏見だと言われても、過去に夫を殺した女が自分の父親と・・・なんて考えたくもない。ただ、これを見ていると「差別してはいけない」と言う言葉が空々しく宙を舞い、そんなものを嘲笑うように大なり小なり事件が起こる。
何かあった時、まず真っ先に疑われる人、その人々の苦悩と言うよりは、疑わなくてはならない側の苦悩が存分に描かれています。
疑いたくない、でも気持ちは視線はどうしてもそこにいく。それって止められないし、どうしようもない・・・浅はかな胸の内を見透かすように、ラストに向かって一気に物語が動きます。
これはもう、羊羹に見えたものが実はチョコレートケーキだった、みたいな居心地の悪さがあります。ただ、人が人を愛するのも疑うのも何がきっかけなのかは当人同士にもわかっていないことなのかもしれない。肌の感じとか、ちょっとした仕草とか、空気とか。
手触りから感じることは、やっぱり大切にした方がいいのだろう。これからも。
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