映画「ユリゴコロ」
冒頭からあまり共感できない主人公美紗子の心情が綴られ、非常にしんどい入り口だった。おままごと遊びの作り物の野菜を口の中に入れられたような、違和感が飲み込めないまま喉にたまる。
そんな時間を過ごしたのちに、美紗子はずっと負の感情でしか埋められなかった心の拠り所を愛というもので埋めてくれた洋介との出会いが訪れる。
洋介もまた、後悔という感情に生かされていた男。そんな二人が肩を寄せ合って生きていこうというささやかな人生を、美紗子の「ユリゴコロ」が阻む。
ユリゴコロ、とは美紗子が聞きちがえ思い込んでいた「心の拠り所」のこと。
理解しづらい主人公の「語り」の形で進んでいく物語は、現在の世界でその告白ノートを発見し、どうしようもなく取り憑かれてしまった男(松坂桃李)が愛する女を求めていく物語と同時進行で語られます。
最後までグロテスクな印象を拭えない、感情移入の難しいストーリーでしたが、もしかして世の中にこんな風に生きづらさを抱えてどうしようもなく社会からこぼれ落ちてしまう人はいるのかもしれない、と思いました。
美紗子は必死で「ユリゴコロ」を探して何となく日常を過ごしているのだけれど、そこには時折自分を揺さぶってくる出来事が訪れる。それによってまた美紗子は先へと生かされる。
ただそれは運命という名の残酷な現実に絡め取られ、決して幸せにはたどり着かない。
少し偶然が重なりすぎかな、という部分は否めないけれど、負の感情に恐れを感じている人には見てほしい作品です。
消化しきれない感情はただ、排泄されるだけなのか。
消化不良の思いを抱えて日常に紛れたい、と思う。
吉高由里子主演、松山ケンイチ、松坂桃李、木村多江、清野菜名出演。
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