パルムドール受賞で沸く是枝監督の「万引き家族」。
安藤サクラの演技をハリウッドも絶賛、カンヌで上映後には9分間のスタンディングオーベーション!
ただ・・・「私にとって1,800円払う価値はあるの?」・・・ですよねぇ。いやあります!断言します!!
レンタルでもいいんじゃない?wowowでどうせやるだろうしなぁ・・・いやいや是枝監督の親戚でも友達でもない(というか赤の他人:笑)私は是非劇場で!とオススメする、梅雨のモヤモヤ吹き飛ばす傑作だと太鼓判を押します。
貧乏だけど仲のよさそうな家族。ただ物語がスタートして間も無く何となく「ああこの人たちは血の繋がりがなさそうだな」と分かってくる。
愛情がないわけじゃない、ただ家族というしがらみから離れて無責任に楽しそう、それだけで現代が抱える闇を内包しながらも圧倒的な力で結ばれていることがわかってくる。
一家はある一定の水準からは漏れている、いわゆる「下層」に位置する人々。なぜドロップアウトしたのかは物語の中盤から後半にかけて徐々に明かされてくるのですが、面々の根底にあるのは過去の愛情を捨て、新しい関係を求めて集まってきたということ。
万引きすることを教える父親、ネグレクトされている少女を親元に返せない母親、壊された弱みを逆に糧にする逞しい祖母、その祖母を慕い自分の価値を貶めることで生きている実感を得ようとする伯母。そんな中、正しい大人の意見や突然できた妹との関わりの中で、徐々に常識と環境の中で迷いを募らせていく息子。
冬から夏という季節にかけて、息がそばにかかるほどにリアリティを持った一つの家族が、こちらの常識やイメージをやすやすと覆してくる。その様子が清々しくて、哀しい。
ここでは「正しさ」が圧倒的な力を持てず、逆に滑稽でありさえする。
それは物語の後半に語られる、真正面を向いた家族の独白によるものが大きい。
語りかけてくるのです、正しくない家族たちが自分たちに向かって語りかけてくるのです。さぁ私たち家族は果たして不幸せなんでしょうかねぇ?と。
迷い悩み、それでも求め続ける愛とは人間にとって善悪だけで測れるものなのだろうか。
自分を晒すことで、期待に応えられなかった過去の自分と決別しようとする伯母役の松岡茉優が美しく儚い。彼女を慕い、弱さを共有する男を池松壮亮が短い時間ながらも好演しています。
そして、夏の暑苦しさをまといながらも汗が匂い立つような色気を醸し出す安藤サクラが、妙にエロティックで生々しい。
女同士でも、夫婦でもカップルでも、上映後に語り合って抱き合って、温もりを関係をじかに感じてください。これはそういう映画です。
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