貫井徳郎作「乱反射」を読みました。
それは小さな新聞記事にしかならないような事故だった。
とある人物の過失致死が問われて終わりを告げた2歳児の事故死。ただそこに到るまでの経緯には、どこにでも誰にでもある自己保身とちょっとした出来心が招いた数々の、事故の要因となるべく事情が絡んでいた。
被害者家族で新聞記者でもある加山は、やりきれぬ思いから事故の真相を確かめようと奮起するが、事実を知れば知るほどにやりきれない思いはどこにぶつけようもなく、ただ肥大していくだけだった。
これは紛れもない自分のことかも知れない。
単なる日常に潜む、「今回だけだから」「私だけじゃないから」「仕方ないから」と己を納得させ正当化する小さな罪にもならないような行動一つ一つ。聖人君子じゃあるまいし、といさめた気持ちが何かの拍子で誰かを傷つけているのかも知れない。
ひとごとではない、と口で言ってみてもやっぱりそれはひとごとなのだと、永遠に思い知らされる作品でした。
どこにでもいるような人たちの、ちょっとモラルを逸した行為。もしかして振り返れば私も、やってしまっているのかも知れない。
直接関わっていなくても、何かの拍子に間接的に関わっているかも知れない見知らぬ他人の生活の一部。
これはもう恐怖というよりも、言いようのない怒りにまみれて主人公の忸怩たる思いを噛みしめる、そんな作品でした。
妻夫木聡さんと井上真央ちゃん主演で映像化されるとの帯を見て買ったのに、放映日を失念していて見忘れました・・・。
貫井作品では、妻夫木さん主演で映画化された「愚行録」が記憶に新しいですね。
妻夫木くん、重厚で影のある役をすることが多くなったように思えます。爽やかなイケメンなのに、陰のある何を考えているのかわからないというような役が似合いますよねー。
個人的には、大好きな作家吉田修一さんの作品の妻夫木くんでは「怒り」の演技が好きです!
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